「その時だけ」の自己啓発と、「蒸し返し」の謎
精神的に参っていた時、いわゆる「自己啓発書」を読み漁った時期がある。
「小さなことにくよくよするな」「すべては上手くいく」…そんな言葉に、確かにその時は納得し、心が救われる気がしていた。
しかし、現実は甘くない。
本を閉じて数日もすれば、すぐにネガティブな思考は「蒸し返して」くる。
「やっぱりダメじゃないか」と。
この「すぐ効かない」という“時間差”と、厄介な「蒸し返し」の正体こそが、今回探求すべきテーマだ。
思考の秘密基地で考える「思考の周回理論」とは
探求の結果、私は一つの仮説にたどり着いた。
それが「思考の周回理論」だ。
ポジティブな思考(「ありがとう」など)も、ネガティブな思考(「どうせ無理だ」など)も、発した瞬間に「衛星」のように宇宙(心)の軌道に打ち上げられる。
そして、それはすぐに結果として現れるのではなく、軌道を1周してくる「時間差」を経て、未来の自分に影響を与える。
なぜ「蒸し返す」のか? = 過去の“ネガティブ衛星”の帰還

自己啓発を読んで「ポジティブ衛星」を打ち上げても、すぐに不安になる。
なぜか?
それは、「今」の不安ではなく、例えば「10年前に打ち上げた“ネガティブ衛星”」が、時間差で今ごろ帰還(周回)してきただけなのだ。
これが「蒸し返し」の正体だ。
「効果がない!」のではなく、過去の自分が打ち上げた“負の遺産”が、まだ軌道上に残っているだけなのだ。
なぜ「一大事」に思えるのか? = “風邪の錯覚”

「忍耐で繰り返す」とは、このネガティブ衛星が帰還してきても、構わずに淡々と新しい「ポジティブ衛星」を打ち上げ続けることだ。
やがて軌道はポジティブ衛星で占拠され、精神的に安定している状態が「普通」(=ポジティブ優勢)になる。
この状態で、たった1機のネガティブ衛星が帰還(周回)してくると、その落差で「異常事態」に見える。
「うわ、ネガティブが来た!一大事だ!」とオーバーに捉えてしまう。
これが「たまにひく風邪(ネガティブ思考)」の正体だ。
普段より健康な人が、僕みたいに、たまに風邪をひくと大騒ぎするのと同じ。
一大事なのではなく、「大半がポジティブになったせいで、ネガティブが“目立ってしまった”」だけなのだ。
「あがき」はすべて、「衛星」の打ち上げ作業だった
「晩成型」の記事で書いた「決定打のないあがき」は、振り返ればすべて「ポジティブ衛星」を軌道に乗せる作業だった。
すぐには効果が出なかった。
それは、衛星が「周回中」だったからだ。
この理論がわかれば、「今もどこか詰まっている」と感じる瞬間の“正体”が見抜ける。
「ああ、今のは10年前に打ち上げた古い衛星か」と。
「自分という存在を楽しむ」とは、この「思考の周回」のメカニズムを理解し、今日も淡々と、未来の自分のために「良い衛星」を打ち上げ続ける、その「探求」そのものなのだ。

